ステンレスの種類とその特徴|スクラップ価値を高めるために知っておきたい基礎知識

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ステンレスは「錆びにくい鉄」として知られており、建築、厨房機器、自動車、医療など多様な分野で利用されています。

見た目はどれも似ているものの、成分や構造によって性能や用途が大きく異なります。

スクラップ業においても、ステンレスの種類を正しく見極めることは非常に重要。種類によって買取価格が大きく変わるため、誤って混合してしまうと査定額が下がる原因にもなりかねません。

この記事では、代表的な5種類のステンレスについて、特徴・用途・スクラップ価値の観点から解説します。

オーステナイト系ステンレス

最も一般的なステンレスで、広く流通しているのがこのオーステナイト系です。
クロムに加えてニッケルを含む構造をしており、高い耐食性が特徴。家庭用から工業用途まで、非常に幅広く利用されています。

代表的な鋼種はSUS304とSUS316。
SUS304は「18-8ステンレス」とも呼ばれ、18%のクロムと8%のニッケルを含有。キッチン、建材、医療機器など多用途に対応します。
SUS316はさらにモリブデンを加えており、より強い耐腐食性を発揮。化学プラントや海辺の設備など、過酷な環境に使われるケースが多いです。

この系統のステンレスは磁石に反応しないことが多く、スクラップとしての価値は高め。分別の際は、見た目だけで判断せず、磁性や比重の確認を行うことが推奨されます。

フェライト系ステンレス

フェライト系は、クロムを主成分とし、ニッケルの含有量が少ないタイプです。

磁性があり、比較的安価で加工しやすいため、家庭用家電や厨房機器の裏板、装飾部品などによく使用されています。

代表的な鋼種にはSUS430があり、ステンレスの中ではコストパフォーマンスの良い素材として知られています。
見た目はオーステナイト系と似ていますが、磁石にくっつくため、識別は比較的容易。

ニッケルを含まない分、スクラップとしての単価はやや低め。ただし分別が適切であれば、回収効率も高く、安定した取引が可能です。

マルテンサイト系ステンレス

このタイプは熱処理によって硬化する特性を持ち、耐摩耗性に優れています。

主に刃物、工具、構造部品などに使用されており、強度を必要とする場面で選ばれます。

代表的な品番はSUS410およびSUS420J2。
前者はボルトや機械部品に、後者は包丁やはさみなどの刃物用途に多く見られます。

磁性があり、熱処理による硬化性を活かせるため、用途は限定的。

スクラップとしては数量が少ない傾向にありますが、混入すると他の品種の買取価格に影響を与えるため、分別時には特に注意が必要です。


二相ステンレス(デュプレックス系)

フェライト系とオーステナイト系の特性を併せ持つ高性能ステンレスです。
耐食性・強度の両立を実現しており、過酷な環境下での使用に適しています。

主にSUS329J4Lなどがこの系統に含まれ、化学プラント、海洋構造物、下水処理設備などで使われています。
塩分や酸性物質への耐性が高く、長寿命が求められる場面に向いています。

流通量はそれほど多くありませんが、含有されているモリブデンやニッケルが多いため、スクラップ単価は比較的高め。

識別には専門的な機器や経験が求められるケースもあります。

析出硬化系ステンレス

強度と耐食性を両立させた特殊ステンレスです。

時効硬化処理を行うことで機械的強度が飛躍的に向上し、航空機、精密部品、タービンなど高精度が要求される分野で使用されています。

代表例としてSUS630(通称17-4PH)があり、高温下でも性能が落ちにくい性質を持ちます。
使用現場は限られますが、金属の構造が非常に安定していることから、スクラップとしても高値で取引されることがあります。

この系統は外観では見分けがつきにくいため、回収時には品番表示や成分表の確認が重要です。

ステンレススクラップの分別と買取価格への影響

ステンレスは種類ごとに価値が異なり、分別の精度によって買取価格に大きな差が生じます。

SUS304とSUS430では、含まれるニッケルの有無によってスクラップ単価が倍以上違うことも珍しくありません。

磁石による簡易判別、火花試験、分析器による成分チェックなどを活用し、可能な限り正確な分類を行うことが重要です。

企業から出る定期的なスクラップには、品番の表示がある場合もあるため、収集時点での確認をおすすめします。

【まとめ】ステンレスは見た目が似ているけど特性や買値が大きく異なる

ステンレスは一見すると似たような外観をしていますが、種類ごとに成分や特性が大きく異なります。
用途も変わり、スクラップとしての価値も違ってきます。

SUS304のようなオーステナイト系は高価買取の対象となる一方で、フェライト系のSUS430は比較的安価。ただし、しっかりと分別されていれば、どの種類も有効な資源として再利用が可能です。

スクラップの適切な管理と品種ごとの理解は、買取単価の向上と環境への貢献の両立につながります。
工場や解体現場などで出るステンレススクラップの処理については、専門業者への相談を通じて、より高効率なリサイクルを目指していきましょう。

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