日常生活や工業製品で広く使用されている「ステンレス鋼(ステンレス)」さびにくく、見た目も美しいことから、キッチン用品や建材、機械部品など、様々な用途で利用されています。
そんなステンレスに関して、意外と多くの人が疑問に思うのが「ステンレスは磁石にくっつくのか?」という点です。
実は、「ステンレスは磁石にくっつかない」と思われがちですが、それは必ずしも正しくありません。
この記事では、「ステンレス 磁石」というキーワードに基づき、ステンレスの磁性について詳しく解説します。
そもそもステンレスとは?
ステンレスは、鉄(Fe)を主成分にクロム(Cr)やニッケル(Ni)などを加えた合金です。「ステンレススチール(Stainless Steel)」の名前の通り、「stain(汚れ)」が「less(少ない)」という意味で、耐食性に優れた金属材料として知られています。
ステンレスにはいくつかの種類があり、それぞれ成分と構造の違いによって性質が異なります。特に「磁石にくっつくかどうか」は、ステンレスの**結晶構造(組織)**によって決まります。
ステンレスの種類と磁性の有無
ステンレス鋼は大きく分けて以下の3つの系統に分類されます。それぞれ磁性の有無が異なります。
1. オーステナイト系ステンレス(非磁性)
代表的な鋼種:SUS304、SUS316
- 最も一般的なステンレスで、家庭用の流し台や鍋、工業設備などに広く使用されます。
- ニッケルを多く含み、磁石にはくっつきません(非磁性)。
- 熱処理しても磁性を帯びにくく、さびにくいのが特徴です。
2. フェライト系ステンレス(磁性あり)
代表的な鋼種:SUS430
- クロムを主成分とし、磁石にくっつきます(磁性あり)。
- コストが比較的安く、冷蔵庫の裏面や電子レンジの外装などに使われています。
- 耐食性はオーステナイト系よりやや劣ります。
3. マルテンサイト系ステンレス(強磁性)
代表的な鋼種:SUS410、SUS420
- 熱処理で硬化し、包丁や工具、刃物類に多く使われます。
- **磁石に強く反応するタイプ(強磁性)**です。
- 耐食性よりも強度や硬さが求められる用途で使用されます。
「磁石にくっつかないステンレス」は本当に無磁性か?
オーステナイト系ステンレスは基本的に非磁性ですが、冷間加工(曲げ・圧延など)によって、部分的に磁性を帯びることがあります。
SUS304でも、板材を加工した後に磁石がかすかにくっつくようにすることも可能。
これは、加工によって材料の一部が「マルテンサイト変態」を起こし、局所的に磁性が生じるためです。
ステンレス製品を磁石で見分ける方法
DIYやリサイクル、製品検査などで「このステンレスが磁石にくっつくか」を知りたい場合は、以下のような方法があります。
- 小型の強力磁石(ネオジム磁石)を用意する。
- ステンレスの表面に磁石を近づけて反応を見る。
- 磁石がしっかりくっつけば磁性あり(フェライト系 or マルテンサイト系)。
- くっつかない、もしくは弱ければオーステナイト系の可能性が高い。
※ただし、表面に塗装やコーティングがあると判断が難しくなることもあります。
ステンレス磁石の利用例とメリット
ステンレス磁石は工業用途と家庭・日常で使用するメリットがあります。
それぞれのメリットを解説します。
工業用途
磁石にくっつくステンレス(例:SUS430)は、磁気センサーの対象部材や固定具として活用されます。
特に食品加工機械では、マグネット付きの部品で着脱が簡単になる点がメリットです。
家庭・日用品
ステンレス製の冷蔵庫やレンジフードにマグネットフックをつけて、収納性アップ。
「磁石にくっつくステンレス板(マグネットシート)」を壁に取り付ければ、簡易掲示板やDIY収納も可能です。
「磁石にくっつくステンレス」を選ぶときの注意点
磁石にくっつくステンレスを選ぶ際は、以下二点に注意してください。
- 磁石がくっつく=耐食性が劣る可能性があるため、屋外や水回りでは慎重に選ぶ必要があります。
- 強度や耐久性も異なるため、目的に応じた鋼種を選ぶことが大切です。
【まとめ】ステンレスと磁石の関係は「種類」で決まる
「ステンレスは磁石にくっつかない」と一括りにするのは誤解です。実際には、ステンレスの種類によって磁石に反応するかどうかが大きく異なります。
ステンレスの種類 | 鋼種例 | 磁石の反応 | 特徴 |
---|---|---|---|
オーステナイト系 | SUS304 | × | 非磁性・高耐食性 |
フェライト系 | SUS430 | ◎ | 磁性あり・安価 |
マルテンサイト系 | SUS410 | ◎ | 強磁性・高硬度 |
DIYや製品選び、工場の資材調達など、用途に応じて正しいステンレスの知識を持つことで、より機能的で長持ちする選択が可能になります。